2021/08/28
「木村さん、マシンが上達を妨げてますね。いい所きてますから。」そんな事言われると素直に嬉しい。実際その、ものすごく微妙なところを使うところまで来た。雑なうちは問題にならない部分。タイムが伸びないことをマシンのせいにしてみる日がついに来た。岩瀬監督もフレーム新調したから俺も新調していいはずだ。まだ両足カート沼※1にハマっていることには気づいていない。 「木村さん乗ると思ったから置いておいた※2んです。メンテは私がしてましたからバッチリです!」と、りゅーじさんがハイエースから引きずり出したニューフレーム。青くてキレイだ。断れる筈もなく、いや、断る気は初めから無かったんだが「頂きます」と言った途端に移植作業が始まり、即日走行可能な状態になった。りゅーじさんありがとう。これで戦闘能力が高まる事を期待したい。勝てるマシンだ。あとはすべて自分の技量次第。ビリから脱したい。ビリはやだよなぁ、てっぺー。
2021/08/28
遡ること「なんか来た」の2週間前。レイン練習後マシンの水分を拭き取り油膜を張って次回の練習に備える。が、トニーにオレとの練習日は来なかった。まさかこのレイン練習がトニーとの最後の練習になるとはその時は思ってもみなかった。突然の別れ。
SS150で初参戦のオレを表彰台に乗せてくれたトニー。一緒にブルーフラッグを振られたトニー。レインの試合中、ぬかるみにハマって後ろから押し出して一緒にチェッカーを受けたトニー。そうか、何回も一緒にチェッカー受けたよな。もうライセンスは一緒にグレードAだ。来週はもう倉庫にいないのかな。2年半ありがとう。
親子でこういう感性なので、色々と処分ができずに家の中が片付かない、コンテナ内も片付かない。あぁ。チームは嫁ぎ先の弥富方面の親子の為に経済的に整備してあげてほしい。というクロージングシナリオを希望。
2021/09/05
タイトルはシェイクダウンと書くのが格好がいい筈だが先に「新車でウキウキの父」というタイトルで大観選手がインスタグラムに上げていた。傍から見ているとウキウキに見えたらしい。違うな。「ウハウハ」だ。
マシンの乗り味は確かに違う。が、タイヤのエア圧、リアトレッド、フロントカラー、アライメントのギャップ等がわかる領域に達しないとわからない差かもしれない。僅かではあるが今の自分にとっては大きい。実は僅かではないのかもしれない。
この日はエンジンは触らずに、フレームと仲良くなることに専念した。
2019/09/19
新カートでウキウキ参戦の石野5戦。予選でスピンに巻き込まれ新車は事故車に。「怪我ないですか?」と心配されましたが「生え際がヤバいです。」と身体の無事をPRしつつもあちこち曲がったマシンダのメージが気になる。人は寝れば治るがマシンは立てておいても治らない。全長が1割縮んだわけじゃないからとりあえず考えるのはよそう。
取り急ぎ鍛冶屋のモジャモジャ氏がハンマーであちこち曲がった形を直し、テッペー氏がマシンを組み直してくれた。まっすぐは走れそうだ。
決勝で今度は大観選手がライバルカーの幅寄せでスピン。1試合で2台とも事故車に。「大丈夫かぁ!息子!」「こんなスピンを目の前で見るために参戦してるんじゃないぞ!」「オレ1日で2回クラッシュするのか!?」1フェムト秒で思いはめぐり、回る2台のベクトル計算してセーフラインに抜けるのは生きた心地がしなかった。1/10秒間の出来事だった。皆は「結果は結果。祝ベストリザルトSS4位!」と祝福してくれたが素直に喜べない自分。「ごっつぁんです」ではなく是非バトルして前に出たい。
2台修理するといくら掛かるんだろう...。
2021/10/03
2 weeks later.
2台のカートが戻ってきた。それなりに歪があり、修正をかけて良かったパターンだった。久しぶりに楽しく乗り味を確かめていると、りゅーじさんから指導が入る。
「木村さんはステアリング切らなさすぎですね。」
長い間ハンドルの切りすぎによるアンダー、向きの変わらないフロントブレーキに悩まされ続けて何時しかステアリングを回さない習慣がついていた。どうやら最後のひと蹴りにはあと少し舵が足りないようだった。
次のセッションからはステアリングをもうひと押しして乗るようにしてみると、エッジが立つ。即ち自分の体重を押し上げるために少々疲れる。確かに旋回するが今度はリアが振り回されて流れ出す。
「リアが流れますんで、カウンターで走れということですか?」
「リアがスライドするなら、剛性を上げて抑えてください。」
最終セッションが終わったあとの指導。試すのは来週、試合前日。もしこれで何か掴めれば、初めてフィーリングに基づくセッティングをしたことになる。園長木村高まる体感?まだ伸びしろはあるのか。
「大観は突っ込み過ぎだから、お父さんと足して2で割ったくらいで。」
う~む、親子で出汁にされてる...見た目はそっくりと言われるが走り方は真逆のようだ。
2021/11/06
ニューマシンが活躍する傍らで、ひっそりと引退をするマシンもある。
旧14号車、大観号。
2018年12月から2020年9月まで数多くの試合を大観選手と共に戦った。試合中に溶接は折れ、フレームにも穴が空き、百孔千瘡で静かに事切れた。リサイクルされ、また新しい素材となってどこかで活躍してほしい。
そして旧41号車、キムタク号。
俺を間違った世界へと導き、できそうでできない楽しさを教えてくれたトニー。ただし彼は新しいエンジンを積み新しいオーナーん元へと旅立っていく。ERSが整備し、試運転も行われた。
最後にもう一度掃除をした。また新しい親子を喜ばせてあげてくれ。
2021/11/06
眼光鋭くりゅうじさんがコース内を見守る。チームメイトに一人ひとり声をかけ、指導していく。
「木村さんは、あとワントーン高くコーナーに入れるといいですね〜」
もっと早くコーナーに入れという趣旨だがてっぺー氏からも指摘されてそのようにしていたつもりではあったが更に奥、いや1コーナーに関してはノーブレーキという事なのか?具体的にはイマイチ掴みきれないので方法についてあれこれ質問をしていると、整備をしながら優しく笑みを浮かべながらこう言った。
「木村さん、アクセルオンのままコーナーに入ってください」
何を言い出すかと思ったら、あー、そんな事はちょっとできないかも。りゅうじさんの笑みが急にニヤついているように見えだして、頭の上に吹き出しも現れた。
((そんな大して難しい事言ってないんやし皆やってることだから練習せえや))
と書いてあることがうっすらと読み取れる。これは以前あっくんにも言われた。二人に言われたとなるとそれをしない限りはここでチャレンジ終了を意味する。難しい。オレは本当はもっと速いんじゃなかったのか?ちょっと練習すれば早く走れるんじゃなかったのか?どうした木村。その程度か?園長 木村巧51歳、そろそろ最大のピンチを迎える。
Intermission
2021/11/21
定期的に参戦する耐久レースおじさんwith青年チーム。結構速い顔ぶれなのだが、石野全体がハイレベルすぎて成績が伸びない...いや、成績は伸びているのだが第一集団に速いドライバーがどんどん入ってくるので順位的には上がりにくいのだ。が、個人的には本番を使ったカート練習と捉える。なんせ4時間もあるからしっかりと研究できる。
試合前に隣のパドックにいた大学の後輩でぱっぱらぱーな後輩にどう走るか質問してみる。絶対にライバルになり得ないと思われているので何でも教えてくれる(しかも太ももつったくせに優勝)。恥も外聞もないおじさんには有難い存在だ。そしてやはり言うことはりゅうじさんと同じで
「アクセルはオンでコーナーに入りますねー。」
やっぱり皆やってることみたいだ。
「踏み変えるときには素早く滑らかに。」
死ぬほど怖いが、エンジンはマイルドなMZでタイヤも応答が穏やかなFD。もう試してみるしかない。そして練習走行兼タイムトライアルに皮むきに出かける。が、事はいきなり上手く運んだ。怖いから(心の中の)限界が来ると慌てて踏み変えをしていたのだが、もう少し奥まで我慢してアンダーを確認できるくらいまで引っ張ってショックが無いように素早く滑らかにブレーキに踏み変えてみると、ノーズが向きを変え出した。
「あれ?こんなに曲がったっけ??」
前輪が吸い付いているようだ。新品FDタイヤも相まってアンダーって何だっけと思うほど操舵ができる。今まで何を困っていたのかがわからない。そう、曲がるためのブレーキ。確かにそうだ。新しい乗り方でライン取りも挑戦的に変わる。なので面白がってオーバーテイクもたくさんした...が不慣れでスピンもしました。ゴメンナサイ。色々と試してるうちにとうとうLAPは憧れの42秒台へ突入。とにかく追いつきさえすればラインで抜ける。
「これがバトルなんだ!」
加速から減速への変化を急激にしないことがコツのようだ。個人的には充実した試合となった。
「試合で練習するのが一番練習になります。」
Buzz Factory 長谷川謙一
「止めながら曲がる。
高度な所まで来ましたねぇ。」
ERS 山本龍司
「そぉ〜〜~そぉ〜〜そぉ〜そぉ、
要る分ブレーキ踏むだけ。」
ATEAM Buzz Racing / 2021 FIA-F4 PILOT 鶴田哲平
「曲げるためのブレーキですね。」
Corridor 杉山佳生
「マシンが互角なら、
後ろの方が有利や。」
ERS あっくん
「バトルというのは、
ライン取りと戦略で前に出あう勝負。
性能を出し切ったマシン同士で。」
園長 木村巧
いつものように(毎回パラメータは変えているつもりだが)基礎訓練。自分が低速コーナリングや、ブレーキングポイントが手前すぎるとき、要するに遅いときに遠慮なくバンパーを当ててくる選手がいる。谷飛鳥選手だ。実は暗黙の了解があって、当てると言っても押してくる感じで、
「きむたくさん、そこじゃないですよ」
というメッセージを感じる。そのスピード差を感じ取ってブレーキングポイントやアクセルワークを調整する。彼はSSクラスの木村大観のライバルに違いないのに同クラスの園長に親切なのだ。いや、いくら伝授しても絶対に自分のライバルになりえないと確信しているから親切なのに違いない。
「木村さん。」
谷飛鳥選手がビートを上げている自分に声をかけてくる。
「自分はもう使わないのでこのタイヤどうですか?」
使用済みではあるが自分にとっては十分な肉厚のBSタイヤを持っている。予算に限りがあるため、こういった声がけは本当に嬉しい。
「ありがとう。いつも助かるよ。」←いつもなのだ
自分が現在手一杯の状態であることを察すると、彼は4本のタイヤを持って木村家のパドックに向かった。ライバルになりえない園長を支援したタイヤを、ライバルの大観選手が受け取るという光景が何ともシュールである。もちろんこのタイヤは俺が履いた。
カートに乗り始めた頃、「どう乗ったら早く走れますか?」「どんなラインが最速ですか??」などと一般的な問いを年齢が1/4程度の先輩たち(いや1/5かも)にしたものだ。「ヒャッホーと曲がってぇ」などと意味不明な指導もあったが、「えーっと、そんなに曲がりませんか?」とか「フレーム曲がってないですかねぇ?」とか「ブレーキ踏んでハンドル少し回せばせば曲がらないですか?」とか「昔しどうして曲がらなかったのか思い出せない...。」といったドライバーまで様々だった。
「昔を思い出せない・・・。」
試合中に以前の走り方と比較しようと思ったのだがその操作ができない。頭では「この辺りで」とイメージできるのだが思うように曲がれる今、恐ろしくてその操作ができないのだ。この時間が暫く続くと以前の走り方が思い出せなくなるのだろう。
事実、以前に執筆した箇所を読み返すと意味のわからない部分がある。これを書き換えるべきか。でも暗中模索している頃の自分の感性と今の自分は変わってきていると思われるので、結論としては誤字脱字以外はそのままとしよう。おかしいと思う人は読み飛ばしてほしい。
理屈や操作は一定量体得してきた。どうやらこれ以降はそれらの操作を必要なタイミングで重なるように、しかも滑らかに行わなければならない。一つ一つ考えてやってると間に合わないので体が勝手に動くまで練習が必要だ。行けるのかキムタク?
その後KTとBSの組み合わせで試してみるも新しい乗り方(というか以前より正しい乗り方)がBSでは思うようにできなかった。うまくかからない。スピード域が違うとやはり難しい。タイミングもわからない。タイムも遅い。何かがわかっていない。ただ、1コーナーにパワーオンで入り、流れながらも2コーナーに突入する事への精神的抵抗は随分と減った。流れながらも曲がっていく...慣性ドリフト状態らしい。また試合までに調整が間に合わなさそうだ...。
「木村さんのページおもろかったで。でもな、オレあんな大阪弁や無いで!」
と大阪弁で話すあっくん。
「まぁ内容おもろいからいいけれど、あれはみんなフィクションやな。」
事実に基づくフィクション。ドキュメント以外はフィクション。一字一句違えばフィクション。しかし彼を知る人は口をそろえてこう言うだろう。
「いや、ノンフィクションです。」
真偽はあなたが本人を見て決めてください。
石野SLO2021 / SSクラスRd.7はお祭り状態で総勢16台体制。混雑するとホールショットは大混雑で皆殺気立ってるし生きた心地がしない。
試合に臨むとき、いつだってジェントルマンを貫いている。だが事は起こった。予選のあるLAPの13コーナー。同じ程度のレーシングスキルのチームメートのインに鼻を刺す。規定通り半車身以上差し込み、ラインで前に出る訳だが彼は自分が居ないものとする軌道でかぶせてくるではないか。残念ながら前輪同士が接触し、前輪同士が接触するということは、彼が自分の車両を認識できていない筈はないので、結局頑張りすぎた彼はスピンに入ってしまった。
予選が終了し、ピットに戻ってくるとヒロさんの声が響き渡る。
「SSクラス41号車のドライバーの方、タワーまでお越しくださ~い!」
仕方がないのでカートをパドックに戻しタワーに向かう。
「SS41号車、木村です!」
「マーシャルの方からライバル車を押し出す危険行為があったと報告が入っていますが事実ですか?」
「そうではなかったですよ。彼も頑張りすぎるといかんわと申しておりました。本人を呼んで尋ねてみてくださいよ。通常1台分くらいアウト側を残すようには心がけているのですが、実際自分もギリギリで走ってるので、この度は1台分じゃなくて0.5台分くらいになっちゃいましたが。あとからインを取られたらそこは譲って、後ろは有利なんだから次のコーナーで抜き返せば平均速度も落ちにくいしバトルの練習をしながら先に行けるよな~、なんて話もお互いしてましたし。この後のジャッジには異議申し立てはしません!」
「木村さんの言い分はルールには則ってますけれどね・・・、審議します。」
結果としてペナルティーは無かった。パドックに戻ると、ドライバーのご家族から「え?あれで呼ばれたんですか?」と驚かれた。でもスピンに入るきっかけを作った原因に自分が関係しているかと思うと後味は悪い。ご家族の皆さま失礼いたしました!
曖昧に行ってきたキャブレターセッティング。気温が上がると絞るとか、ローとハイのバランスでセッティングとか抽象的な事は知っていても、今日のセッティングに自信があるのかと言われると全くない。イケてる状態がいまいちわからないのだ。が、応援に来ていた耐久レースで有名な岩瀬総監督のアドバイスがあった。
「キャブレターセッティングは山の上下ですからね。」
何がヒントになるのかはわからないが自分にはこれが刺さった。燃料の濃さと、ハイローの関係、ロケットスタートの理屈など頭の中で全部串刺しになった。込み入った記事はまた書こうと思うが、自信をもってキャブレターニードルを回せるようになった瞬間だった。そして決勝に向けてローニードルを5分開けた。
2021年石野SS最終戦。ここでビリになると、全戦ビリが確定する、格好が悪いのでせめてブービーにはなりたい。
「呼び出しなんて恐れずにアグレッシブに行け~」
皆にそう励まされ、そう心を奮い立たせて16台中12番グリッドからのスタート。しかしホールショットが落ち着いたころには、定番の最下位となっていた。皆怖い顔して走ってるから怖いんだもん。そして残念なことに先ほど開けたローニードルの5分が適切でなく、少し濃くなりすぎた感があったが今更どうしようもない。グローブを外して爪で戻せるものなら戻したいぐらいだ。
言い訳をしていても状況は変わらない。しかし脱出速度は前のカートより早そうなので何とか追いついていく。そして5コーナーで鼻を刺して何とかオーバーテイク成功。しかし技量に差のない彼はきっとどこかで刺してくるに違いない。見えない彼に追われながら周回を重ねていく。抜かれなければSS初の最下位以上。でも彼は刺してくる。きっとくる。きっとくるぅ。怖い。怯えながらも最終LAPに差し掛かり、チェッカー。今回は刺されずにゴールできてしまった。ビリじゃないの?オレ?
嬉しかった。SS初の、ライバルカーのアクシデントに依らないビリ以上の成績。昔、耐久レースで初オーバーテイクが成功した時のことを思いだした。
追記) え?セッティングに問題があったの?じゃぁ実力じゃないじゃんオレ。年末のセルフ忘年会中に15号車のドライバーのメカニックから伺ったところ、トレッド幅の変更や、タイミングをずらした乗り方など、複数チャレンジをしすぎて上手くまとめられなかったらしい。無難にまとめた俺とは大違いで、これではブービー持ち越しだ!
「皆、コーナー外側へはみ出してR稼いでるけど、石野くらいやったらアスファルト内で何とかなる思うんやけどな。」
昔しカートに乗り出した頃にあっくんは自分にこう言った。それ以来、究極解はアスファルト内にあると信じておよそ2年間、切磋琢磨練習を続けてきた。そして最近りゅうじさんは言った。
「木村さん、そんな怖がってないで他の車輌のようにもっと膨らんで走ればそれだけRが大きくなってボトムアップに繋がりますよ。ちゃんと曲がれますから!」
「摩擦係数μが変わって恐ろしいですも。滑り出すし。」
「滑ってたって思ったところに車を持っていけたらそれは制御できているということでしょ?滑って走ることが必ずしも悪い訳ではないですよ。基礎練習ばっかりやってるんだからもうそれくらいできるでしょ...。」
「でも怖い。」
しかしこれ以上のタイムアップを目指すならやるしかない。思い切って外側のタイヤをアスファルトの外へ持っていく。左右のグリップが違うのでステアリングが暴れる。何度か怖い思いをしながら、でもしっかりとステアリングを握って角度を維持すると、車は曲がっていくようになった。
「おぉ、はみ出してても滑りながら何とか曲がってくわ、というかあんまり怖くない。」
あっくんにもう一度尋ねる。
「昔、アスファルト内で何とかなると言ってましたよね?」
「ん〜、オレそんな事言いましたっけ??」
信条はマイクロ秒で一気に崩れ去り、以降大きなRでのライン取りに取り組むようになった。
「あ〜、なんか言ったわ。アスファルト内で走る練習をすればどこのコースでも早いということになるからそういう意味で。基礎練習のうちはそのコースの走り方で少しばかり早くなっても技量が上がるとかそういう事とちゃいますでしょ?」
シーズンも終わり、石野サーキットにも本格的な冬が訪れる。路面温度は低く、水分を含んで乾ききっていないアスファルトのグリップは良くない。年内最終日は大観選手と車両整備を中心に基礎練習をした。そしてふと気づく。
「オレ、そういえば月次に走ってるなぁ」
そう思うのも無理はない。寒くて湿った日はタイヤがグリップしないので例年ピットアウト後の1〜2コーナーではスピンしかけたり、とにかくペースが上がるのに5〜10週はかかったり、タイヤが温まった後でもベストラップの1秒落ちが常であった。が、夏季のように走っている自分がここにある。
コスミックカートに乗り換えてからの初の冬。フレームも重要なファクターには違いないのだが上手な選手はこういった差が少ないということを踏まえるとやはり何か乗り方が変わったのかもしれない。マシンから感じ取れる情報は「概ねいつもどおり曲がる」。そしてそれはレイン走行の工程圧縮走法でそうなっていると結論。大観選手から何度も聞かされていたがこういうことか。入力操作後、カートが挙動し始めるまでにタイムラグがあるが、レインはこれが極端に長い訳で、ドライコンディションでもこの遅れが無いわけではなく、ごく短いタイムラグはある。この一瞬ぶん先に操作して待ってればいればいいわけだが無意識にその一瞬「ぶれずに」待ってていた。思った瞬間に挙動が現れないと恐怖に負けて追加入力をしてしまうのがオジサン。園長先生だから子どもたちにはよく言う。「ちょっと待ちなさい!」年齢に関係なくオレ自身もちょっと待たないとな。昔にも同じような記事を書いた気がするが、説明は同じでも置かれている状況が違う。今まで数々の指導を受けてきたが、もっぱら最終課題側から見ての指導であるから、同じ解決法を使う初期の課題をクリアしていい気になっていてはいけない。「ブレないように待つ」最重要。
マシンから何も感じずにただ待っていても偶然に頼るばかり。再現性があるとは言えない。そして待ってる間に感じなければいけないことがあり、これがどうも高速旋回とスピンの違いのようだ。そしてプッシューオーバーとも分けなければいけない。うまく決まると小さい半径で周り、マシンが出口に向いた頃に少しだけ前輪をすくい直してやると出口へ向かってまっすぐ走っていく。これが結構楽しい。低速コーナーでも、中高速コーナーでも基本は同じ感じがする。そしてまた気づいてしまう。
「やっと練習を始める入り口に立った。」
いったい何回入り口に立てばいいのだろうか。是非石野で36秒台を目指したい。
訂正記事にするまでもないがブレーキングポイントが若干手前過ぎて、それだけでもセクター辺り0.05秒位のロスがあるようだ。これはあと少し我慢しさえすればなんとかなりそうだ。オレはロックなんかせずに止まれるんだ!怖くない、怖くない。
「木村さん、待つのは一瞬やで。木村さんの一瞬は茶が飲めそうやからそれはちゃうで!」
※あっくん語録いわずもがな。3年くらい前、eスポーツで有名な大石澄海選手が石野で練習していた頃、1コーナーの周り方を聞いたら「ヒャッホ〜って曲がって...」と説明してくれた。当然素人おじさんには意味不明だった。最近大観選手から「父さん、1コーナーちゃんとヒャッホ〜って回ってる?」と確認が入った。てっぺー選手からもそれを指摘されており、以前の自分と比べれば奥の方までパワーオンで入っていっているつもりでいたがまだ足りないらしく、りゅうじさんやあっくんからも改めてパワーオンで旋回、いや奥まで行けと言われたので全員から指導が入った事になる。とにかくもっと奥まで行くしかない。ノリと勢いで奥の奥までアクセルオンで入り、ステアリングの角度を決めて固定。2コーナーが曲がれなくならない程度に、うっすらブレーキをアテると、あのMZのFDタイヤのようなフィーリングで高速に流れながらコスミックカートは「ヒャッホ〜」と曲がっていった。
結論
やっぱり1コーナーの進入説明は「ヒャッホ〜」以外無かった。
うっすらブレーキは2コーナーが間に合わないからのブレーキであって、1コーナーを回るためのものではない。あくまでパワーオンでの旋回だ。こうして1コーナー旋回からアクセルオフは無くなった。
必ずしもアスファルト内に居る必要はない。
完全グリップ走行に固着する必要もない。が、ドリフトはロスには違いない。使い分けと使う量が重要。
入力後に車が反応しないからと言って更に入力せず怖がらず少し待つ。
短く強いブレーキングを心がける。
強いブレーキの後は必ず曲がるブレーキがある。
大観選手のエンジンが突然ジャリジャリと轟音を立てだした。騒音はクラッチの中から聞こえてくる。順にばらしていくと。クラッチのウェイトのアームの一本が折れていた。以前オーバーホールしたときのクラッチが残っていたのでパーツ交換すれば大丈夫だ。しかしクラッチの外し方がわからない。経験がありそうな人を求めて別なパドックに向かって歩いた。そこでまた丁度いい所に谷飛鳥選手のパドックがあったので、ベテランクルーの方に相談してみると、
「それは専用工具のプーラーが無いと無理だね。」
「誰か〜、プーラー持ってない?木村さん困ってるんで。
お~い、誰かプ~ラ~、プ~ラ~!」
キックボードに乗って誰彼構わず訪ねて周ってくれて、KT用では無かったものの代用可能なプーラーにたどり着くことができた。もちろん無事にクラッチは交換は完了し、カートも走行可能な状態となった。
この度は多くの方のお世話になった。困ったときに自然と助け合う石野サーキットの風潮が好きだ。もちろんこのあとプーラーを購入し、気にしてくれた人たちにKT用のプーラーを木村親子は持ってるよと報告して周った。いつか誰か困っているチームに恩送りできるように。
「父さん、何か今日路面悪いよね。」
この日は計測器を付けて走行している選手が少なく、状況をつかみにくい状態だった。自分は他の選手の意見を聞こうと別なパドックに向かって歩いた。そこでまた丁度いい所にコースから戻ってきてヘルメットを脱いでいる谷飛鳥選手が居た。
「ぶっちゃけ、今日路面どう?」
「そうですね、自分はいつもとそう変わらない感じでしたが。」
どうやら路面が悪いのではなく大観選手の腕の問題だったようだ。残念。と、その時は思ったがセッティングにより概ねカバーできたことも記しておく。