2022/01/01
エンジニアは目で見たことと手で触れられるものしか信じない。あっくんは現実思考のエンジニアだ。
「お参りなんかしとる暇があったら、練習せんかぁ。」
小市民な木村親子は正月早々レースに効くという勝速日神社に願をかけに出かけた。大観選手は表彰台、園長も表彰台...せめて第2集団位に居たい。参拝はついでに出かけるとご利益がないらしいのでこの日はお参りのために出かけてそのまま帰ってきた。しかしそれだけでは駄目だ。神社はお願いするのではなく、神様の前で決意表明するところらしい。では文言改め、
「今年は親子で表彰台に上がります。」
ただの決意では駄目で自分の事ではなく9割がひとの幸せが含まれていないと幸せを売りにする神様は忙しくて聞いてもらえないらしい。更に文言改め、
父
「全てのバトルを制して遅咲きの大観を笑顔にさせる為に精一杯協力したい」
大観
「父が上位に来て嬉しがれるように指導します」
参拝一つとっても作法が大変なのだ。こんな記事書いてないでちゃんと練習もしますって。
2022/01/01
ズバリ、寒さと暗さだ。耳ではない。冬期のレースはあっくんのパフォーマンスが落ちる前に早めに片付けを済まそう。
2022/01/03
お参りばかりでなくちゃんと練習もする。新年基礎練習開始だ。大観選手自信自己練習が必要なのに父の訓練にも付き合ってもらって恐縮だ。ひとの幸せ、ひとの幸せ。
「父さんやっぱりコーナーのロスが多いね。コーナーでハンドル回すスピードも遅いし。」
「いや、フレームのしなりに沿って回さないで、急に回すと逃げちゃうじゃん。なんでKRは逃げないの?あ、フロントスタビ外したままだった。」
マシンとの対話を学ぶために外されたフロントスタビライザーは戻されることになった。そもそも不要なら最初から付いてないでしょうしねぇ。重くなるし。
2022/01/03
父
「1コーナーがヒャッホーなら9コーナーは?」
大観
「ん゛~~~~なハァ~。かな?」
共感が得られる方はご連絡ください。
2022/02/05
名古屋市は守山区にあるATEAM Buzz のサービス拠点のBuzz Facoryに訪問。長谷川社長が出迎えてくれた。広い倉庫で2人きりだから感染対策も十分だ。話題は今年度のチームの話、レンタルカート部門の予定、雑談で盛り上がる。そしてこのページの話になった時、このページの存在をご存知なかった事が判明。いや、できたての頃ご案内したんだけれどな...。見てよ、もう。そして帰り際の頃、
「レースで本当にエンジョイできてて楽しいです。でもレースフィー払ったので財布がエンジョーです。」
「あっははは、木村さんそれ面白いから書いて、書いて!」
チームオーダーだなこれは。
2022/02/05
りゅーじさん
「今週末は石野サーキットで練習・コースサービス日とさせていただきます。皆様とお会いできることを楽しみにしております。」
木村
「ムムム、出勤日...。」
りゅーじさん
「楽しみにしています👍」
...。 この強引さがいい。
2022/02/05
「木村さんは自分に技量があってもそれを試さへん。技量持ってても怖がって試さへんのがおじさんなんやけどな。」
これは伸び悩んでいるおじさんに共通する問題点かもしれない。親鳥よりも大きくなったヒナが巣から飛び出せず困ってる様子とでも例えようか。そんなに若くないか。おじさんはその先で何が起こるかをよく知っている。だからその「まさか」の手前でセルフリミッターが働いてしまう。しかしコツコツと練習をしていればカートの挙動や体感が備わってきていて、以前の想像の「まさか」とは違った未来に書き換わっている。でも頭の中は古い「まさか」のままで、せっかく技量がついてきてもリミッターが効いていれば宝の持ち腐れ。勇気を出して少し先を試してみれば以前はわからなかった感覚とともに、少し広いマージンを感じるはず。邪魔をしているのは心の壁だけだ。
例えばレインスリックでクラッシュパッドに突入した経験があるとすれば、それはレインの時に気を付ければよく、ドライの時には想定しなくてもいい。
2022/02/05
「おじさんたちは冷えたタイヤの1周目とかでテールが流れたりすると、それでびびってしもうてな、以降全部のコーナーで冷間タイヤモードの走りになってしまうんや。」
これもやりがち。失敗したのはそのコーナーだけなので、ほかのコーナーまで用心深くなりすぎる必要はない。徐々にタイヤも温まるし、書いてて思うのが、おじさんに「少しずつ早く」とか「少しずつ奥で」とか指導しても、実際は極端になってしまっていて、車の挙動も極端に変わって慌てるケースが自分も含めて多々見られる。欲張らずに限界は少しずつ試したい。極端な変化をつけるからびびってしまうほど怖い目にあうのである。
2022/03/12
とある週末、自分をレーシングカートの世界へ陥れた導いた諸おじさま先輩方が集まり、耐久レースに向けての練習をしていた。MZはもちろんKTも混在での一般走行。この日は自分のマシンに消費すべき旧タイヤをローテーションで履かせたため、かえってグリップが低くトレッド幅を思いきり縮めたようなリアが振り回される状態だった。僅かなブレーキングミスでも命取りだ。「木村さん、今日は遅いじゃないですか。十分追いつけそうですよ。」とおじさま方。これではいけないとエア圧を0.05Kgf程度下げた事により外側のゴムも接地するようになり何とかカートらしい走りになってきた。しかしまたキャブレターも思ったようには合わず試行錯誤を続ける。
一方我らが岩瀬さんもKTで走行しており、久しぶりにいじられる環境が整ったかと思った。が、残念ながら岩瀬さんも排気に白煙が混じりエンジンの調子が悪い様子。それでも調整を重ねて何とかレーシングスピードには合わせてきた様子だったがいまいちシャープさが出てこない、と思ってはいた。
「いやー、木村さんに追いつけなくなりました。」
唐突にパドックで言われた。相当な衝撃だった。岩瀬監督には尊敬と計り知れない敬意を持っているからだ。メカにも詳しくジェントルマンドライバーの理想であり、娘さんもかわいい。レーシングカートに乗り始めて以来ずっと手本であった。勿論これからそうあり続ける。とにかく取り乱すぐらいのショックだった。うまく説明ができないが、やってはいけないことをしてしまった感覚。神社のお札に落書きをしたらこんな罪悪感かもしれない。岩瀬さんはどんな日も最後は自分の前を走り抜けていくかなければならない。
「同じ位置までアクセルを踏んでいられないんですよ。」
その恐怖は誰よりも自分が一番理解できていると思う。外荷重が不十分でコーナーに突入すればカートは飛び出して行ってしまう。岩瀬さんだって外荷重をかけていないわけではない。もちろん自分も精一杯外荷重をかけてコーナーを周っていく。ふと思った。
「使っている外荷重が違うのかも?」
本日の路面は通り雨もあり絶好調ではなかったもの、ドライ練習としては充分と自分は考えていた。しかし岩瀬さんは路面が悪かったと云う。昔感じた、上手い選手は路面が濡れていない限り劇的なタイム差は出てこないが、自分の乗り方だと日によって1秒ぐらい遅くなってしまう差。きっと岩瀬さんもこの谷にハマっていたのだろうと自分に言い聞かせる。という事は岩瀬さんのコンディションに合った路面状態になると華麗にオーバーテイクをしていくに違いない。まだまだ自己研鑽がたりない。そう思わないと石野に行けない。
2022/03/13
石野SLシリーズ開幕戦ー木村園長編。各クラストップチェッカーを受けるのは誰か?大観編は彼のFacebookを見てほしい。
前日練習では気温も上がり路面が重くなっていて、後輩選手に追いつくこともできず、キャブレターも合わず途方にくれた木村親子。なぜ同じく路面が重いはずなのに後輩選手のほうが難なく走るのかが不思議だった。オフシーズン明けによくある状態だが納得行いかない。しかもとどめに明日は試合当日で新品タイヤによって路面は更に重くなる。憂鬱。木村はスプロケットの山数を1丁増やして対応することにしたが方法論でしかない。そうでなくても練習がノリノリでも本番でもノリノリだった試しはないので更に憂鬱。この度も嫌な予感しかしない、ではなく嫌な実績しかない。
開幕戦当日、セッティング迷子のまま非情にもドライバーズミーティングの時刻。SSの列に向かう。それなりに人数がいたにもかかわらず飛鳥君のヘアがレッドであったので何処へ並ぶかは遠くからでもすぐにわかった。君が分けてくれたタイヤがあるから今日の自分がいる。
公式練習は、セッティング迷子のままなのでタイヤの皮むきとタイヤ圧の設定をするくらいの感覚で走り出す。まぁ標準的な圧で問題なかろうという結論。燃料の流量を調節するキャブレターニードルの低回転側のローも根拠もなく標準だ。無難にこなしてパドックに戻り、ERSのクルーに質問してみる。
「路面が重くて脱出で離されるんですよね。」
「木村さん、アクセルベタ踏みしてません?回転域に合わせて踏み込む量を調整しないと結局燃料が濃くなりすぎてパワーダウンするからアクセルワークは丁寧にしないと駄目ですよ。」
「そんなもんですか。」
タイムトライアル。今更コーナリングは変えられないのでアクセルワークに集中してみよう。気温が穏やかに上昇してきたので燃料は濃すぎてはいけないのでキャブのローを少し絞ってみた。しかしガス欠症状でこれはダメだった。締めすぎだったようだ。戻ったら戻そう。走行中にハイ側(キャブレターニードルの高回転側)は回せるのだが、今いちしっくりこない。そしてタイムトライアルなのにアベレージなタイムで穏やかに通過。とりあえず戻ってきてローは標準に戻す事にする。更に対策をERSのクルーに再び聞いてみる。
「最終コーナーからホームストレートで追いつくんですけれど、後半で離されるんです。回転数も14000rpm位で頭打ちで。」
「それキャブレター合ってます?」
「ちょっと確信無いんですけれど、もう少しハイ側をいじくってみます。」
そして予選となり迷子のままダミーグリッドに並ぶ。全車両ローリングスピードからホームストレートを疾走し、1コーナーのホールショットへ。てんやわんやでオジサンドライバーの苦手な部分。8/10グリッドからのスタートだった筈なのいつも通り最後尾へ。アクセルワークはイメージでやってはみるがパワーが出ている感はわかない。1周してホームストレート。ハイニードルを動かすと閃きは突然やってくる。
「あ、エンジンがビーンとなって元気な感じがするぞ!?」
回転数は14380rpmまで上がり、徐々に前走者のテールが近づく。オーバーテイクが可能だ。しかも夢のオーバーテイクが繰り返される。この時37.187sをマークし自己ベストも更新された。急にハイ側のセッティングに目覚めたセッションだった。
残す課題はアクセルコントロールだが、決勝はこれも丁寧に対応することにした。と言うか本来いつもするべきことなのだが。
決勝も8番グリッドから。普段は決勝の頃には気疲れしてきて、どこか「早く終わらないかな?」的な逃避的思想が脳裏を過るのだが今日は違う。試してみたいことがある決勝だからだ。ハイニードルの設定と、アクセルワークだ。心なしかワクワクしている。グリーンフラッグは降られ、ローリングスタートが始まる...はずが、木村親子2台ともエンジンがかからず、後続車両に迷惑をかける失態。大きく隊列は乱れ、1周目は不成立、2周目からのレース開始となった。失礼しました。
ロケットスタートは、おおむね決まったがやっぱり2コーナー以降ぐちゃぐちゃで最後尾。その後、やっぱりと言うかバックストレート折り返しの5~6コーナーで複数台クラッシュ。
自分は追突をかわして仲良くなったハイニードルを回してロケットスタートの要領で再スタート。無事にすり抜けだ。何だか気分がいい。半周まわってホームストレートでキャブの再調整。エンジンはまた元気になる。もう一度目の前で接触もあったがこれも上手にかわして前へと進む。しかし2度も団子状態になると順位がわからない。後ろに何台いるかもわからない。ひたすら前に向かって走る。ライバルカー不在なので、肉厚のあるおろしたてのタイヤのグリップ感を堪能する。「レースというステージでなければ楽しめない感覚だよなぁ。」
2度の団子のロスは大きかった。前にもう1台チームメイトがいたはずだが見えない。アベレージが上がっているせいか、しばらく走っているとそれが見えてきた。しかも余計なものまで視野に入り目を疑った。「大観も一緒に見える!?」先の方で何か起こったのか?と思ったが、やがてチームメイトに抜かれた。何かマシントラブルがあったに違いない。
「大観頑張れ!何とか完走しろ!」
親だったら誰でもそう思う。チェッカーとDNFは大違いだ。大観選手の不調は続き、周回を重ねるうちに追いつきそうになっていた。そして最終LAP12コーナーに親子で飛び込む。親父はややイン側だ。もし大観が道を譲ってきたら抜くまいと決めていて、アクセルを緩めようとしたその瞬間だった。彼は不調を抱えながらも全身全霊オーバーテイクをブロックしてきた。「これは俺のラインだ!」自分達は親子ではなくライバル同士だったのだ。レーサー木村大観が自分のラインを横切ろうとするライバルカーにブロックを仕掛けてきた以上、自分もレーサーとしてライバルに敬意を払わなければならない。手加減などはSSクラスのレースと大観選手への冒涜となる。
「このまま抜く。」
父は意を決して持ちうる技量を全て使って半径が最小になるように回った。オーバーテイクは許されても弾き飛ばしては父親失格だ。軽く接触もあったが父は息子の前に出て、その数秒後には自分が先にチェッカーを受けた。嬉しくないと言ったら嘘になるが、胸の痛いチェッカーとなった。
大観選手の不調の原因はエアバルブからのエア漏れでパンク状態だった。それでも38秒台で完走した大観選手を称賛したい。
「試合の日のセッティングは
結局当日しかできない。
でも決勝まで3回も試せるよ。」
Buzz Factory 長谷川謙一
2022/03/19
例によりましてJKオート様主催の美浜耐久。この度は類選手のお父様とチームを組んで3人での出走。チーム名はHIROTAKA MFGではあるが、3人ともスーツはATEAM Buzz。レンタルカートによるハーフコース耐久は実は厳しい。なぜならストレートが少なく息継ぎできる場所がホームストレートしかないからだ。
くじ運の悪い木村は最後尾からスタート。丁寧に自分のスティントをこなし、12台中5位まで順位を上げる。続く加藤選手も徐々に追い上げるも「25号車ペナルティーです」どうやら追い越し禁止区間で前に出てしまった事がオフィシャルの感にさわったようだ。ピットに戻りJK流ペナルティー。それは強炭酸一気飲み。ドライバーでなくても良いのだが、チームの誰かがボトルを空にしないとピットから出られない。この時は木村が対応。
大観も何やらペナルティー呼び出し。前走者にぴったりと張り付いたSS走りがオフィシャルの感に触りプッシング判定。これはドライバーチェンジ後に発表されたので、本人が直接炭酸対応。目が真っ赤だったぞ。
抜きつ抜かれつ迎える終盤。2番手大観選手がトップ車両を追うが微妙なな距離。徐々に詰めてはいるが決着は最終LAPあたりまで持ち越しそうな気配。丁寧にLAPを刻むが追いつけるかどうか。そしてあるLAPで先頭車両はコーナー処理中の初心者群の中に突入。見るからに危なっかしい状況であったが、そのまさかが起こった。コーナリングに失敗した初心者車両が先頭車両を押し出して揃ってスピンに。
「ごっつぁんです」
ここで大観選手は首位となり、そのままチェッカーフラッグ。スピンチームは大観選手の猛追を意識しすぎて危険な賭けにでてしまった事が敗因となり優勝を逃した。HIROTAKA MFGチーム2連勝目。3度目はあるのか?
2022/04/19
ローテーションの兼ね合いで、暫く保管してあったエンジンがあった。久しぶりにキムタク号に搭載し火を入れてみる。以前はパワーもいまいちでクソレッテルを貼られた大観選手にも嫌煙されたかわいそうなエンジンである。以前とは少なくとも園長木村がキャブセッティングについてよくわかっていなかった頃である。
物知り気分で再セッティングを試みるが、う~ん、やっぱり糞レッテルは依然そのままだった。やはりオーバーホールを待つしかないだろう。しかし現在エンジンはこれしかないので遊び感覚で色々なセッティングを試してみる訳だが、ガス欠症状が出るほどローニードルを絞り、ハイニードルはしっかりかぶる位大きく開け、燃料の濃さはパワーバンドを逃さないようにアクセルワークでコントロールするという実用性に乏しい状態でセッションに出た時だった。針は刺さった。エンジンは爆音を響かせ、ヘッドカバーは揺れ動き、普段は95Km/h程度のトップスピードも98Km/hをマーク。加速感が違う。りゅうじさん、イケてる状態だ。スプロケもセッティングも違うので比較にはならないが大観選手をも抜いていく。静かに眠っていたエンジンが頭角を現したのだ、が、このセッションでおしまい。オーバーホール待ちなほど走り込んだパーツたちはいきなりのハイパワーに耐え切れず、見るも無残な状態に。前スプロケの山はU字どころかω字になっており走行不能。各種オーバーホールを終えるといったいどんな性格を見せてくれるのか楽しみだ。2ストのセッティングは楽しい。
2022/05/01
石野SL第2戦、コンディションは久しぶりのレイン。せっかく新しいレーシングシューズのデビューだったのに、雄姿は我らがカーマDCM仕様のグレーでレインコートの内側は何も見えない。しかしこのDCMレインコート断水性は抜群で、しかも背中がメッシュで快適性抜群なのにグローブ以外ほぼ濡れない優れもの。オジサンにはお勧めだ。どれくらいレインが久しぶりかというと、2020年SSデビューの初戦からの2年ぶり。使用したのは2年保管されていたレース落ちタイヤ...。一方我らが大観選手は新品のレインタイヤ。これも1年以上保管...。
公式練習はドライタイヤで卒なくこなしたが、タイムトライアル前にはまとまった雨。慌ててレインのセッティングへ変更。しかしレイン経験が2年も前なので意味も考えずに当時のセッティングを再現。実はこれは池級の大雨セッティングで、今回の月並みな雨のセッティングとは異なっていた。スピンは防げるがアンダー出まくりで曲がれないセッティングだったのだ。訳も分からず計測開始。二人とも撃沈。
予選までそのまま進行し、振るわない結果で予選も終了。だいぶ後ろの方。そしてローリングスタート中にキャブレターが合ってない事に気づいた。これは親子一緒のはずだ。大観選手も同時に気づいたらしく無駄な走りを避け予選を棄権しピットへ戻っていった。大物はやることが違う。しかし園長木村はレインの練習が足りないので予選を使って練習。いやいや冒涜してないですってSSクラスを。しばらく雨レースが無かっただけ。
戻って聞いたら大観選手、チェーンカバーが外れて飛んでいきオレンジボールだったらしい。あれまぁ。買いかぶった。彼の決勝はビリスタート。また父ちゃん前グリッド。ごぼう抜きの見せ場を作れるのか?
そうは言いつつもどうも様子がおかしいと思い、応援に駆け付けたてっぺー選手や岩瀬総監督と相談した結果、リヤトレッド(タイヤの間隔)は縮めろとのこと。恐らく2年前のセッティングは雨量はもちろんの事、下手な2人がスピンアウトしない事に重点を置いたものだったようだ。セオリーは縮めろ。てっさん、2年前も今日も居たんだから教えてよ。もう!
トレッドは締め、車体は緩め、サイレンサーの蛇腹は延ばし、キャブも低回転仕様。予選からどれだけ変えたかな。「リヤを縮めると曲がりやすいけれど飛び出しやすいピーキーな特性が出るから気を付けて!」河野くんアドバイスありがとう。あれこれセッティングを変更し恒例となった決勝でのぶっつけチャレンジ。運命や如何に。
決勝スタート。ローリングからのロケットスタートは上手く行った。キャブよ~し。ホールショット。宜しくな~い。車の向きは変わるけど向きだけ変わって横に滑って飛んでいく。荷重を最大にかけようにもかけ始めることもできない。自分の体重だけで外荷重をかけるも4輪ドリフト状態。コントロールはできても早くな~い。1台だけ、まるで雪上のラリーカー状態。原因は言わずと知れた古いタイヤ。エアパンパンでも湯気も出なければ温まらりもしない。レースとしては散々であったがリクリエーションとしては結構面白かった。新品タイヤで飛んでいくドライバーも居る中でも無事完走。オレ上手になったかな?
ブルーフラッグを2回降られた2年前のレース。そして今、道具にハンデがあったにも関わらずビリでなかった事が唯一誇れることだろうか。大観選手は5位だった。よくまぁあのタイヤでビリから登って行ったもんだ。関心関心。と言うか、いくらもったいないと思っても、古いタイヤでレースに出場するとレース自体が台無しと言うお話でした。
「勝負に負けるのは、
やるべきことが分かっているのに
迷っている自分に負けるからだ。」
園長 木村 巧
2022/05/04
風は涼しくても日差しが厳しく夏を感じさせるゴールデンウイークのある日。石野サーキットの傍らで気心知れたレース仲間たちが楽しげにBBQの準備をしている。子ども施設の園長である木村は、たとえ屋外であっても飲食は控えるよう厳命されており(と言うか厳命する側)BBQには参加しない事になっていた。木村は雨レースでメンテナンスが必要なカートを倉庫から出してBBQをよそ目に整備を進める。空腹をくすぐる美味しそうな食材の香り。「コロナのバカ...。」カロリーメイトとプロテインバーをかじりながら大方作業が終わる夕方ころ、鈴鹿F3のDDRシミュレーターによるグリッド位置決定予選が行われた。本戦は、4時半から行われるレンタルカートエキシビションカップ(全員現役レーサーだから当然そうなる)。予選まで執り行ったのに決勝は乗車順となり、まぁこのラフさが良いのだが。特に現役はSWS80Kg調整を行い、1列ローリングスタートとなった。日章旗まで振られ公式戦さながらのバトル。そして上手い順のゴールとなった。実況解説になってないが本題はこのあと。
「倉庫の鍵がない。」
帰り際に木村は気づいた。車の中から工具箱からポケットの中までありとあらゆる場所を捜索したが見つからない。
「木村さん、コース内なんてないですよね??」
「ほんの少し可能性があります」
レンタルカートの時間帯になっていたので、お客さんがはけるまで待機し、計測器を落とした他のチームのお父さんと娘さん親子の方と一緒に石野サーキットコース内の合同大捜索が始まった。計測器は大きく目立つのでじきと見つかった。倉庫の鍵は...4番グリッド左側のクラッシュパッドの足元に札の部分だけが落ちているのを、計測器を落とした娘さんが発見してくれた。鍵はない。ちぎれて飛んでいったようだ。すでに日は沈み夜の帳がコースを包む。岩瀬総監督ご家族や、レンタルカートに乗りに来ていた外国人の方々まで総出で探してくれたのに見つからなかった。
「明日早朝に探しに来ます。」
サーキットスタッフにそう伝えて、その日はよくお礼を言って皆解散してもらった。
翌朝、5時半頃に起床し、7時には石野サーキットに到着。レースでもないのに早朝石野に来るなんて。乗らずに帰るなんて。しかも出勤前。仕方がないのでコース内に入る。札が4番グリッドだからその付近をよく探す。アスファルトにはないから路肩を丁寧に探す。15分くらい探しただろうか。3番グリッドイン側にシルバーに輝くもの。倉庫の鍵は反対側の芝生に刺さっていた。この辺りは昨日も何度も歩いたのだが発見できなかった。日没後での発見は難しかったのだ。無事に石野サーキットへ鍵を返還し、一路職場へ。始業には何とか間に合った。カートに乗るときは、ポケットに何か残っていないか確認して搭乗しましょうね、というお話。
2022/05/22
時は石野エンジョイ耐久第2戦。この度は木村親子は自分の車両ではなく他人の走る車両の面倒を見るピットクルーとして参加した。本来なら岩瀬総監督も駆けつけるところだが、来られない事情があって不在。てっさんと木村親子の3人で、MIE Route 1チーム2台に対応する。初めての実戦ピットサービスは務まるのか。
石野の神様はドラマが好き。ドラマが起きると大川委員長を喜ばせる事になるので避けたいところだが、何も起こらないはずがない。事態は予選から戻ったMIE Route 1号に発生。ブレーキディスクから煙が出ている。結果としてはキャリパーを留めるボルトを強く締めすぎていて、常時ブレーキがかかった状態になっていた模様。フルードも漏れ出した。この状態で第1戦を完走したらしいからう~む。
「木村さん、現役レーサーなんでしょ?これはないでしょ!」
と、事態を聞いて駆けつけてくれた石野のスタッフさんは言う。車両の状態が信用ならないとわかっていれば念入りに確認したと思うのだが(普段はERSが見ている)この度はそうでなかったようで見落としである。交換ブレーキASSYを石野サーキットさんが提供してくれたのでリタイアにならずタイムリミット2分前でのグリッドに車両を戻せた。
更にドラマは続く。MIE Route 1 SP号、即ちアタックチームのブレーキにも異常が発生。決勝開始早々、ドライバーは左足を上げて、手でバツ印サインを出している。ブレーキの不具合を伝えている。ピットストップを指示し、ブレーキが完全に効かなくなる前にパドック前へ戻るように指示。しかし最後のETCストップでベーパーロック発生し、パドック前で停車できずに通り過ぎてピットロードエンドまで行ってしまった。はっきりとした原因は分からないままコースに戻るが出たり入ったりを繰り返したが、まともに走行できないので最終的に別な車両にエンジンとタイヤ、スプロケ等を移植する決断。てっさんと木村親子で作業を進める。手が6本あるのでピット経験が少ない人達にはスピードは速いように見えたかもしれない。しかし、自分の脳裏には、岩瀬監督や、あっくん、りゅうじさん、もじゃもじゃ君の作業が浮かぶ。遅い。遅すぎる。しかも一発で決まらず締め直すもどかしさ。できたかできないかと言えばできたと言えるだろうが、こんな体たらくではとてもピットクルーで御座いとは言えないなと思った。
SP号のベーパロックの原因はおそらくカカトの部分に付いているステージのせいで足の位置が上がり、ブレーキロッドにシューズが当たってブレーキが常時かかり続けて熱が溜まったと推測。
結果MIE Route 1 SPはファステストを狙うもギリギリ届かず順位は最下位18位、いや大川委員長の陰謀に消えたDNFが2チームあったので16位、MIE Route 1(エンジョイ)は10位というまずまずの戦果。また、不慣れな自分を受け入れて一緒に走ってくれた古巣の74号車もおじさんチーム?ながらも14位で健闘。
結局、石野の神様はどのチームにもちょっかいを出した。レースは操縦技術はもちろんのこと、あらゆるエンジニアリングもマネージメントも全てうまく噛み合わないと優勝できないスポーツなのだ。優勝したぱっぱらぱーのおっぺっぺはスゴイ。
2022/05/29
ある週末、フレンズデー宜しく石野サーキットのパドックはいっぱいだった。木村親子もテントを出してもらい駐車スペースでの整備に。隣には最近走り始めたという親子が来た。体格差が無い様子で1台のマシンを共有して楽しんでいる模様。木村家のように2台維持ではないので経済的そうだ。今日で5日目の練習だそうで、車両の方はエンジンはKT、タイヤはBS。重量は145Kgで合わせているという。SSだなコレは。リアバンパーに貼られた若葉マークも初々しい。テントは所属チームから離れた場所であったので、自分たちも昔し助けてもらったようにサポートをした。もちろん所属されているチームの主義に反しないように。
「あれ?どこかで会ったよね、知ってる!どこだろう?」
娘さんが大観選手に言う。そう、親子と言っても父と娘なのだ。最近は競争女子とのコラボもあり、その辺りかなとその時は思った。名前は大観、名字は木村。そして彼女の記憶は繋がった。
「学童で一緒だったよね?」
なんと地元の学区違いの同級生だった。大観選手が小学校低学年時代に利用しており、その時のことを彼女は覚えててくれたのだ。インパクトのある名前は名刺になるな。そして、自分がコース内に鍵を落としたときに札の部分を見つけてくれたのも彼女だった。
「あくる朝発見できたんだよ」
お礼を言いたくてももう会えないと思っていたので自分にとってもサプライズだった。鍵捜索の事後報告もできた。
その日の練習でも早々に40秒台を切ってくる彼女。
「大観何やってるの?回るだけでしょ!」
と、先にゴールした彼女に叱られないか今から心配している大観選手だった。
2022/06/05
3年前、体力の回復を喜んで自分試しで出場した春日井絆マラソン。今年は親子で出場でき、念願の大観選手との襷(たすき)リレーが実現して嬉しく思う。前回は大観選手がダブルブッキングの為、何と一人で出場。レギュレーションが2人以上のため危うく棄権かと思われたが運営の方が助っ人でペアを組んでくれたおかげで走り切ることができた。感謝。
実は内緒にしていたのだが前回このマラソンで下腿三頭筋(上部付け根の膝外側の裏)を故障した。激痛が筋肉の付け根に走り、一ヶ月はまともに歩けなかった。その後も数か月は走る事など不可能だった。セラピストにも怒られた。今回はこういった経験を基にプライドを捨てたペース配分で臨む。
マジオドライバーズスクールを借り切っての春日井絆マラソンは2時間30分を襷リレーする。中距離陸上の詰め合わせから、ファミリチーム、お達者グループまで参加チームは多岐にわたるが、そんな中、木村親子は「親子レーサー木村」として参戦。木村は明日会社もあるし今週末は石野耐久3戦がある。そもそも試合前週にマラソンなどをして消耗しても大丈夫なのかという考えもあるが封印。
最初の1周はレーシングスーツで走る。強制ではないのだが皆仮装して走るのがこのマラソンのしきたり。熱すぎて熱中症になるから1周(1.15km)走ったらすぐに脱ぐ。通常ジョギングペーが5:30/km程度の木村だがGARMINの力を借りて8:00/Km程度まで減速。おもしろい体験としては以前は減速しようが何をしようが苦しかった呼吸が今年は何ともない。話をしながらでも余裕で走れる。前回は景色や他の選手について何も覚えていないほどゆとりがなかったのが、今年は他のチームの仮装を見たり、オフィシャルさんと言葉を交わすなど余裕があった。恐らくフェイルマスクをかぶってヘルメットをし、しかも横Gの為に自由に息もできないレースがトレーニングとなり心肺機能が向上したのだろう。高山トレーニングのような状態だろうか。大げさ気味に足をかばいながらも、実際終盤は足が痛くなってきたが親子で無事にゴールすることができた。カートレース以外でもなかなかできない体験ができた。
体力的にはまだまだゆとりがあり、マラソンのあと、バイクのディーラーに出かけたりすることもできた。もちろん翌日は普通に歩け、出勤に支障もなかった。
大観選手は、朝下宿から大学の教室までの10分間、登り坂&階段(校内含めて300段くらいか?)のダッシュトレーニングが効いており3分台が狙えそうな実力者だ。
2022/06/22
石野SL第3戦は、木村園長にとって珍しく憂鬱だった。路面温度が上がってきた頃からマシンがよく跳ねるようになり、練習用の使い古しタイヤでは目立たないものの、肉厚のあるレースシミュレーション用のタイヤを履くと症状は顕著に現れる。トレッドを調整したりベアリングを調整したり、エア圧を調整したりしたがあまり収まらない。そしてハネを克服できないままレース当日となってしまった。憂鬱だ。
乗り方でカバーできなくもないが、タイムが出ない。あれこれセッティングを変えて、よくわからないマシンを乗りこなすための練習を公式練習で行う。またこのパターンであるが憂鬱なまま公式練習を終える。ブレーキは強く踏めないし、アクセルオンも車のバンク角に合わせて踏まなければならないというつまらない状況。
3ベアセッティングでタイムトライアルに望む。セッティングが間に合わず、先頭車両が走り出した頃にダミーグリッドに到着。ギリギ出走。しかしやっぱり思うようにアクセルもブレーキも踏めない。歯がゆい時間が過ぎていく。冷静にマシンの挙動を見ていると、コーナーに入るとまず左前のタイヤで何か詰まるようなきっかけがあり、右後ろが大きくインリフトしてめくれ上がる。そのまま跳ねる。スタートが半周遅れたうえにまともに走れない状態のキムタク号。やがて飛鳥選手が周回して追いつき抜いていく。結果はドベ2。タイムトライアル邪魔する気はなかったんだけどスマン。ビリじゃなかっただけマシと思うことにした。
左前のベアリングを確認すると、ベアリングが結構ゴリゴリ鳴っている。末期の音だ。跳ね上がるのは右コーナーなので、取り急ぎ左右を入れ替えてみた。そしてタイヤの偏芯も確認できたのでバランスも取ってみた。
迎えるは予選なのだがセッティングの結論に達する前にダミーグリッドからスタート。乗りにくいまま始まる予選。前タイヤハブの左右入れ替えと、ホイールの偏芯修正が功を奏して跳ね上がるのはリヤだけに。少しだけ勝算が見えてきた。
アクセルワークでかなりハネを抑えられる状態になったので、決勝に向けての憂鬱感は少なくなり、「木村さん、エンジンは絶好調そうだから後ろスプロケ山数減らしてチャレンジしてみたら?」てっさんや忍くんが言う。十分その気になるような状態だったのでスプロケを変更。
決勝が始まる。いったいどうなるか。SSクラスでは自分はいつも最下位争いになる。故にブービーで走っていると絶対に抜かれたくないという気持ちになるのは自分の事のようにわかる。ホールショットを過ぎると、自分は定番の最下位、と思いきや、前の方で粗相をしたカートが自分の後ろへと下がっていく。不調ながら7/9位のチャンスだ。不毛ながら最下位争いが勃発するわけだがライバルカーは危険をかえりみず勝負がついたラインを危険をかえりみずに突撃してくる。運が悪いと2台ともスピンのパターンだ。リスクを減らしたいので丁寧に様子を見ている間にも前走車とのギャップはどんどん空いていく。もう時間がない。意を決してインに飛び込んだところ、行き場を失ったライバルカーは行き場を失いリヤバンパーに接触しながら後方へと下がっていった。これは格好が悪いと思う。勝負のついているラインでは意地を張っても前に出られないのだ。ライン取りの見極めは重要。
ルーキーの期間は仕方がないとも言えるのだがバトルの作法がわかっていない。またこれを身に着ける為にもレースに出る必要がある。かつて自分もそんな時期があった。棋士ならば王手で手詰まりがわかれば「参りました」と、相手が王将に手をかける前に頭を下げるではないか。勝負のついたラインは譲ろう。そして次のコーナーで仕掛ければいい。自分たちの目標は表彰台のはずだから先頭集団から離れるような事態は避けよう。と言いつつも、ホールショットで先を越された責任は自分にあることに違いは無い。最近バトルが楽しいので、是非良いコンディションで臨みたい。
スプロケの変更は、若干高速域が伸びたもののブレーキもアクセルも思うように踏めない状況では上手く生かせなかった。やはりトルクを重視してコーナーでの接近戦に重きを置くべきだったとレース中盤くらいで思った。が、手遅れ。
一方大観選手はFINAL LAPの11コーナーでは5番手を走行していたが、最終コーナーを抜けると2番手に浮上しており、2位でチェッカーを受けた。詳細は彼のリポートで。
レース結果は親子でどちらも端から2番目、という成績で終わった。
2022/06/26
「木村さん、おっ!早いなぁ。うちの若い子並みやなぁ。」
残念ながら褒められたのはカートではない。それくらい早かったら既に大観選手を抜いているわけだが、早かったのは最近コツがわかってきたタイヤ交換。よほど冷えてなければホイールをつま先で抑えてつタイヤをつぶして鷲づかみにして、ひと思いに引き寄せればボコボコと抜けてくる。思い出されるあっくんの熱い指導。
「50のおっさんの動きや無いで」
標準ホイールのBSタイヤなら10~15秒くらいで1個は抜けるのだが、ERSのあっくんや松っちゃんは5秒かからないので修業が足らん。おじさんは若い人に褒められると嬉しい。それがりゅーじさんだと喜びもひとしお。
2022/06/26
レンタルカートの走行のセッション中止の放送がかかった。コースに目をやると2コーナー奥のクラッシュパッドに刺さったSodiが見えた。この光景自体は珍しくはないのだがセッション中止となるとただ事ではない。カートは冷蔵庫のように大きくて重いクラッシュパッドの下をくぐり抜け、その奥の廃タイヤバリヤーもくぐり抜け、コース外周のコンクリートウォールに達していた。何が起こったかは本人しかわからないのだが、クラッシュパッドの下敷きになっていたご本人は意識朦朧で状況がわからない。恐らくアクセルを踏み続けたのであろうと推測される。負傷したドライバーはやがて救急車で運ばれていった。せっかくのリクリエーションも台無しだ。たかだか60~70キロの小型車両のエネルギーですらこんな状況であるから、1トンを超える自家用車が公道を走る時のエネルギーを考えると恐ろしい。また、負傷者のもとには修理費用の請求書が届くことになる。勉強代も高くつきそうだがこれはサーキットのルールなので仕方がない。
後日、レンタルカートの故障を経験した知人にこの話をすると「自分はタイロットが外れてハンドルが効かなくなったんだけれど、瞬間的にそのハンドルで何とかしようとしてしまい、実際アクセルは踏んだままだった。と言うか、下半身は固まってしまっていた。」と証言。踏み間違い以外に硬直して制御不能も起こり得るということだ。気を付けようがない領域かもしれないが学びとしたい。
2022/06/26
広がる青空を飛行機が横切り、正午を過ぎた太陽が眩しく照りつける。木陰にリクライニングチェアを並べてバケーションを楽しんでいる親子の間を心地よい風が吹き抜けていく。鳥のさえずりと、かすかに聞こえるラジオの音楽が、南国情緒を漂わせる。スターバックスのボトルに注がれたドリンクを口にしながら隣でまどろむ大観選手に声をかける。
「日常を離れてこうしているとストレスから開放されて、いくらでも寝られそうだな。」
「あ〜そうだね〜父さ〜ん。」
「まるでリゾートだ。」
まるでリゾート。親子が訪れているのは、かの有名な石野サーキットパドック。ラジオ以外にはエキゾーストノートが鳴り響いているのだが、なぜか血流音がマスキングされて聞こえないかのように麻痺して耳に入ってこない。目を開くと、ひざの上には食べかけの唐揚げ弁当。
この親子、重症。
2022/07/03
石野SL第4戦前日の朝、ウグイスの鳴き声で目を覚ます。周りを見ると添い寝をした子どもたちがパックに収まったメザシのようにまだ寝むっている。例年だと漁から帰ってきた漁船からばらまかれた魚のようになっているので、今年は子たちは寝相が良い。ここは、ひるがの高原付近のコテージ。園長木村は、お泊り保育の真っ最中だ。一方、石野サーキットパドックでは大観選手が工具の準備やカートのセッティングを始めている。全て大観選手にお任せ...またぶっつけ本番。そろそろ周到に準備をして試合に望みたいところだが現役園長故にはなかなか叶わない。
金曜の夜に雨予報が出たため慌ててレインタイヤの手配をしたものの1セットしか入手できなかった。これは当然エースドライバーの大観選手に装着するに決まっているので、自分は前回大観選手の履いた開封1年4ヶ月、いや5ヶ月の中古の、2レース落ちレインタイヤを装着することに。今回も厳しい戦いになりそうだ。
試合当日朝、石野サーキットに向かう。雨は既に降り出し、レインタイヤへの交換作業から始まった。ホイルのビートストッパーが錆びておりエア漏れを発見。車検の時間に間に合わないくらい対応に手間取った。セッティングは公式練習ギリギリまで続いた。
新しいブレーキパッド、新やわらかドライブシャフト、質の悪いレインタイヤ。前回の2年落ちタイヤも劣悪だったが、少々新しくても2レース落ちは既に溝がないので話にならない、とも言っていられないので慣熟走行に務める。ブレーキもCRC残ってるような感覚。跳ねの心配だけはなさそうだ。グリップは、まぁレインスリックに比べればよっぽどマシと言ったところか。
淡々と試合は進み、予選でチームのドライバーからTボーンを喰らい、最後尾。あ~、あいつ塞いどいてさっさと行きやがった!追いかけながら全体と同じようなペースで走っては見たものグリップが無いため無理だった。そして決勝は最後尾スタート。更に溝は減っていき、熱も入らないのでカートはドリフト状態から徐々に4輪ドリフトへ。もう限界だ。
ミスなく決勝は走りきったが最下位。タイヤのグリップがあったらどんな戦果だったかと思うと残念でならない。最後にタイヤの溝の深さを測ってみると最深部で2mm。よく頑張ったと自分では思っている。新しいレインタイヤで走りたい。大観選手は、え〜黒旗ってナニソレ。
2022/08/27
「木村さんは正確で、
どのコーナーでもミスはしないんですけれど。」
りゅーじさんは続ける。「大観は1LAP中に2~3回はミスしますけど、木村さんより速い。カートは正確に乗ることではなく速く走る事が目的のはずですよね?」その通り。「カートが最も速くなるのは少しドリフトするようなちょっと限界を超えたあたりで走るのが一番速いんです。でも故意にドリフトに持っていくようではダメです。」
これはレイン走行宜しく、やむを得ず限界を超えていくのを抑えて乗れということなのだろうか。グリップ走行は極まってきた感も出てきたのだが、次はあの怖かった限界を超えている領域で走行し、しかも行き過ぎない程度を維持する練習となるのか。せっかく怖くなくなってきたのにまた逆戻り。園長木村。再びピンチか。
2022/08/28
時は石野エンジョイ耐久第3戦。木村親子はSSのシリーズ戦に予算を割くべく疼く心を制しながらこの度もMie Route 1チームのピットクルー。ゲストドライバーとして競争女子で活躍する永井歩夢も迎え
上位を目指す。前回ブレーキのクリアランスが狭くベーパーロックが発生した為、今回は丁度パドック隣に居合わせた岩瀬総監督の指導に基づき若干開き目とした。
練習兼タイムトライアルが午前中に行われ、当チームは42秒前半。決勝は中央の12/23位からのスタート。この度は目立ったトラブルは無く、木村家が提供したことと言えば、リヤトレッドの変更くらいで、あとはガソリンスタンドの空き情報をわかりやすくドライバーに伝えた事ぐらいか。残りの時間はおいしくたこ焼きや焼そばを食べたり、ハンバーグ弁当を食べたり、戦況を楽しむ4時間となった。俯瞰するレースもまた楽しい。
しかも結果は6/23位と順位を上げており、Mie Route 1チームの速さが伺える。トップからの技量差を数字で乱暴に概算すると1LAP当たり0.135秒の差しかない。それでも2周差が発生し順位は6位となる。極限状態の理論値にどこまで迫れるかというストイックな戦いなのだ。どこがエンジョイ耐久なのかがよくわからないのが石野耐久なのである。
この度のレースの神様のいたずらは、レース終了5分前のサポートカー投入。隊列解除時には残り2分。隊列が詰まった状態で2周程度で決着がついてしまう。もちろん目の前のライバルを抜けば順位が上がるチームもあるわけで、混戦状況は見てる分には最高に面白い。突っ込んでオーバーテイクにに成功するチームもあれば、横向きになって散っていく車両もチラホラ。耐久の面白さが残り2分に凝縮されるという石野ならではの展開だった。ヒロさんよそで実況なんかやってるから面白い所を見損ねましたな。
2022/09/23
例によって園長木村のドライバー的準備や成長が何も行われないまま石野Mシリーズ第6戦前々日。車両整備が中心となったり大観選手の大学生活もあったりしてと言い訳をできなくもないが、とにかく練習がないまま前々日を迎える。天候は大げさではないにしても台風。
園長には次の課題があった。
冬場は悪くないので夏場のオーバーグリップの対応。
路面ができていない時の対応。
エンジンのパワーを残さず出す。
いつもEiwa Racing Service山本兄弟の指導を仰ぐ訳だが、りゅーじさんとあっくん(このチームに所属してずっと謎なのだが山本龍司氏は「りゅうじさん」、山本あきら氏は「あっくん」)はアプローチが違う。熱血あっくんはこう言う。
オーバーグリップは無視すればいい。スプロケットの山数も冬のままで問題ない。グリップのないコーナーはブレーキエンドは動かせんから少し手前から弱めのブレーキで入るだけやけど、夏場は半径大きくする奴おるけどVターンというか冬のまんまでええんやない?半径大きいして待ってるなんて無駄な時間やで。あとエンジンはローニードル開けすぎるとスタートが厳しくなるからやたらめったら開けるのは危険や。あとパワーの事気にするんなら、このアクセルワイヤーの張り方じゃ駄目や。俺のT型六角棒レンチで...L型?そんなショボい工具嫌や。使いたないで。
一方、ライクアジェントルのりゅーじさん曰く、
スプロケ大きくするのは有りだと思います。上位の選手でも木村さんより山数多い人いますから。それでもってトップスピードが高いのは謎ですけどね~。グリップがない時にはグリップのいいときの走りをして、要は決勝と同じセッティングとタイミングで走って、飛び出していく部分は飛び出したままにして修正しない方がいいかもです。度胸も付きますし。エンジンはローニードル開けるのあんまり好きじゃないです。ところで他で教えているオジサンたちなんですけど、ある時いい走りになってきて、でも次乗るともとに戻っちゃうんですけどね。あれなんですか?忘れちゃうんですか?
言ってくれますねぇりゅーじさん。でもそんな事忘れる訳がない。でもわかるよオジサンたちの苦悩。カミナリ怖いといったような経験、そう太古の怖かった記憶が、最新情報を上書きするのだ。理屈はこうだ。ある時絶好調な走りができたとする。晴れてれば午後遅くならない頃の時間の筈だ。いい気分で帰宅をするわけなのだが、後日再び搭乗したときに、朝なら何もかも冷えているしタイヤだって温まっていない。当然グリップ限界も低い。この状態で早々と絶好調の走りをすると当然カートは飛び出す傾向にもなるし、アンダーも強くなる。ヒヤッとしたが最後、安全対策としてあの初心者の頃の乗り方がシステム権限によりメモリーに上書きロードされ、プロテクトモードが故システムが解除するまで消すことができなくなる。「今日はグリップ低いのかな?」という思い込みが解かれるまでシステムによるセーフティーモードが続く。これがカートがスピンしても一回りしてそのまま走れるりゅーじさんに歯がゆく見える原因だ。
この悪循環を無くすための一つの方法を書き記したのが自分のページだと思っている。要するに恐怖が発生するメカニズムをつぶす、一見制御不能と思われる域に入っても実はまだマージンがあって慌てず対策すれば、そしてオジサンでも対策ができることを知りさえすれば、ただの大まわりやオーバーステアな感じで終われるのだ。怖がる領域ではないとわかればいい。
話を戻そう。最近あれこれとマシンをいじくりすぎた感もあるので、セッティングをノーマルに寄せて、少々暴れても、暴れたままで行こうと思う。コースが俺に合わせてくるまで待つことにしてみる。
2022/09/24~2022/09/25
路面が自分に合ってくるのを待つ作戦なので、セッティングイメージは晴れた日の夏の午後の設定。そしてインストール(パーツの交換等)は終わっているつもりでも結構漏れがあったりするので、セッション時間直前に慌てないで済むように丁寧に再確認する。以外にガソリンなんかが無かったりもするので要注意だ。
石野サーキットではフロントスプロケットは10丁が適しているとされるが、これがとにかくよく減る。11丁ではありえない速度で変形していく。初めは自分のチェーンの張り方なり乗り方なりが悪いのだろうと思っていたがどうやらそうではなく石野のコンディションでは早く劣化する事がわかった。フロントスプロケットを新しいものに交換すると、チェーンの伸びが急に無くなって今まで少しもったいない事をしていたような気がする。
午後のシミュレーション走行に向けて準備を進める。タイヤは前回のレース落ちを装着して、エンジンのローニードルは開け気味設定で備える。
晴天の午後にレース落ちとはいえ肉厚のあるタイヤでコースに出ると実に楽しい。グリップ感が半端ない。本番さながらのブレーキングも試せるのでまさにシミュレーションだ。ただエンジンのパワーが微妙な印象だったので、今度はローニードルを絞り気味で試してみる。フィーリングはこちらの方が悪くないから今回は絞り傾向で参戦しようと思う。ところで「グリップ感」などは乗り出したころは全く分からなかった。不慣れな頃は新しいタイヤの有難みなど何も感じ取れなかった。あぁもったいない。
もう触るところもないので、ドライバーズミーティングの後はゆとりがあった。タイヤも皮むきだけを行うので3周ほどまわってほどなく終了。ATEAM Buzz勢はチーム揃って戻ってきた光景は棄権したかのようにも見えて滑稽だった。
一所懸命に走る。今日ほど新品タイヤのグリップを感じたことが無いほどグリップする。ステアリングを切り増しする時も手が疲れるほどだ。この日は3~4コーナーの相性が悪く、微妙に伸び悩む。エア圧が普段より高めになっていたためまとまりが悪かったような印象。エンジンは低速域の機嫌が良くないの更にローを絞ってみる。因みに9/10位。ただタイムは全体的に近接しているので気分は悪くなかった。
今回の石野SLは開催クラスが多くて予選が昼を過ぎていくという事態。ローを絞ったセッティングが妥当だったかロケットスタートもうまく決まり、前走者に間隔を開けずに追従できたので自分の成長を感じた。そしてどうも3~4コーナーのまとまりが悪く成績も伸び悩む。エア圧はいつもより上がり気味だったので調整。同9位。車重を測るとオフィシャルの女の子が「えっ?、もう一度ちゃんと乗って下さい。」と日汗ものの表情。車重は145.2Kgでマージン200gでスリル満点。「144.*と表示されて驚きました!」との事。狙ってない上に多めにガソリン入れたはずが、発汗で軽くなったようだった。こわ~。
決勝は既におやつの時間帯になった。予選と同じセッティングで出走したところ、燃料不足状態でロケットスタート失敗。時間帯が変わるとこんなに変化があるのかと痛感するも時すでに遅し。昼を過ぎて午後も深まるとローニードルを開ける必要があるようだ。実体験としてニードルの角度をここまで痛感する事は珍しい。色々と感覚が研ぎ澄まされてきた感もある。エア圧の僅かな降圧の挙動の変化がまた3~4コーナーで顕著に表れてタイムは伸び悩み、7コーナーでの接触を乗り越えてやっぱり9/10位。計量はまた145.2Kg。またまたびっくり。試合ごとに軽くなる傾向はあるので少しずつガソリンは増やしていくものの、ここまで軽くなると車重が読めなくなるからどうしたものか。とどめは呼び出し。そんなに悪い接触だったかな?
「四輪脱輪です。」え?、7コーナーで膨らんだ時は片輪山の内側だったと思ったんだけれどな。「イン側がホワイトラインを踏んでいれば不問ですが、越えてしまうとペナルティーに、次回からする予定なので今回は警告です。昨今コースの外側もコースのように利用する選手が多いので引き締めていこうと考えています。」との事。9位の下はビリだから日汗をかいた。日汗の多い試合だった。
何とか決勝で3位を守るも、コース内に居たレース関係者によると「ライバルカーが2台続いている時の5~6コーナーの脇が甘く、普通なら御一行様で2ランクダウン(1台はクロスを取れるが2台続くと対応できない)する所をたまたま運良く逃げ切っただけで実力の3位ではない」と厳しく叱責。表彰台に乗っても怒られる大観選手であった。
2022/10/01
朝から張り切って出勤、いや、明日の準備の為に石野サーキットへやってきた。明日の試合(?)には2台ともエントリーしているので準備も2台だ。
まず先週履いていたレース落ちタイヤ計8本を外し、肉厚はあるが古いタイヤに履き替えさせる。しかしKart Republicのホイールのタイヤの脱着は大変。ホイールのくぼみがビートから若干遠いので、山を越えさせるのが難しいのだ。そして明日のタイムトライアルごろに、肉厚が薄いが新鮮なタイヤを装着する計画。レースにはゴム厚が有利なのか鮮度が有利なのかを見極める。読みでは鮮度が重要と考えているが試したことは無い。在庫のタイヤで実証試験だ。そしてこのSL17タイヤとも間もなくお別れだ。業界に激震を走らせたブリジストンのカートタイヤ撤退宣言。
9時には「あっ!」という反応があったが、10時になっても大観選手は来ない。
2台ともタイヤも履き終わらせ駆動系の整備に入る。大観号のスプロケ周りが嫌なオーラを発している。摩擦が多い。理由はわからないが逆転は良く回る。正転は摩擦があってすぐに止まってしまう。チェーンルブ等の塗布の順番に問題があったのか?
丁寧に調べていくと正転の時にブレーキパッドが少し傾いてディスクを擦っている事が判明。キャリパー周りを調整して紙1枚のクリアランスを出して駆動系整備完了。
11時。大観まだ来ない。
2ストエンジンスターティングプロシージャーに基づいて、給油から始動まで行う。あとは走るだけだ。大観まだ来ない。
12時を過ぎて石野弁当を食べ始める。大観はまだ来ない。午後1時過ぎ。もう待ってられないのでコースに入ろうと思った頃に大観は現れた。
「ごめん、ちょっと調子が悪かった...」
「もう後は走るだけなんだから!全部やらせてもう!」
さっさと弁当食って調整しろ!という試合(?)前日だったが明日の戦果はどうなるんでしょうね。
2022/10/02
現役大学生によって競われるカート選手権。この度の選手権は諸事情により参加見合わせ校が多数の為一時は中止も危ぶまれたが、貸し切り走行会中にスプリントレース3本という形で何とか開催にこぎ着けた。走行会なので参加制限はなくなり、若者から年寄りまで幅広い年齢層で競う「レース風走行会」となった。走行会なのでレギュレーションはライセンス所有以外大まかで、SSクラス以上はMAXまで参加という自分としては前代未聞のレースとなった。
ATEAM Buzz Motorsport木村大観選手と園長木村もチャリティー?参戦。園長木村はSS Rd.6よりブレーキ部の不具合があったのだが、この日は更に症状が顕著に現れた。キャリパーのシリンダのエンド端よりもブレーキディスクが摩耗してしっかりとパッドが当たらずブレーキが効かない状態となっていたのだ。ブレーキをかけてタイヤを手で力一杯回すと回ってしまい、エンジンを掛けてトルクをかけるとエンジンに負けて回ってしまう。遊びを最小限にしブレーキフルードを足すも大した改善にもならずにそのまま試合に出走。普通は見合わせる所だろうけど。
自分の成績は大した事はなかった。大観選手も大した事無かった。彼はストレートが伸びなかったようでキャブレターを分解してみるとキャブレター内のガソリンフィルターを砂と枯れた芝の破片が塞いでいたようだ。燃料行かないから伸びる訳ないんだが、それで先週のSS走ってたのか??カデットじゃないからリストリクターは不要だ。教科書的には基本整備。
そして園長木村は感じるところの多い走行会となった。ブレーキングポイントが手前に来ている事をチームメイトに前日から指摘されていたのだがこれは操作として正しい。ブレーキ効いて無いんだから。
そしてタイヤの選定。1年放っておいたレース落ちタイヤとレースシミュレーションまでした直近の減ったタイヤとどちらがグリップするのか。先輩方には当たり前すぎる話なのだろうけれど、古いタイヤは肉厚に依らずカサカサで、走行後に車両を持ち上げてもスッと持ち上がるのに対して、鮮度のあるタイヤは薄くてもアスファルトに張り付いていた。もちろん決勝は鮮度のある方で戦った。
タイヤはギリギリレースに耐えるにせよ、ロックまで行かないブレーキではバトルにならないしクリアラップもうまく決まっても月次程度で話にならない。今となっては当たり前。
先週に続いてタイヤの鮮度を体感しながら師の言葉を思い出す。「古いタイヤで練習しても上手になりませんよ。」「天候やタイヤ、セッティングで味は変わりますから一喜一憂してタイミング合わせたりセッティングいじくり過ぎずに、いいタイヤでコンディションの良い日にだけ走ってその感覚でいつも走るようにすればいいんです。」実感を伴ってりゅーじさんの言葉が脳裏に染み渡る。繰り返し言われてきた事なのに理解するのに2年かかった。
キャブレターセッティングはまだ修行が足りないが以前よりはエンジンのパフォーマンスを活かしてる感は出てきた。
フロントスプロケットが悪いとチェーンもリヤスプロケットも駄目にしてしまう事も学んだ。
50代レーサー木村巧。最近の伸び悩みは結構ハードウェアがウェイトを占めていた事になる。原因が分かってくると立ち込めていた霧が晴れてきた気もする。これらの知見と体感を最終戦でどれだけ活かせるのか。次戦が楽しみになってきた。そして岩瀬総監督のハードウェアは自分と違っていつも完璧なので侮れない。
ところでブレーキを蹴ったりしてレースをしたため夜には太ももが筋肉痛。明くる日収まったから筋肉年齢は若そうだ。
2022/10/06
#33 Teppei Tsuruta
(Photo from race report)
鶴田哲平。2022 FIA-F4 Japanese Championship Rd.9 Rd.10 ドライバー。今回ATEAM Buzz Racingよりスポット参戦したのでレースレポートを届けてくれた。内容は神がかった何かよりも細かな対策を丁寧に積み上げていった内容が記されており、結果両戦ともシングルフィニッシュと好成績。応援しているチームメイトのおじさんとしても嬉しい。
丁度自分も小さなエンジニアリング的不手際が少しづつタイムを落としていく事が気になり始めており、この哲平選手からのレポートが励みになった。自分は大雑把にレースカーには乗れるようにはなったもののドライビングテクニックもメカニックも場当たり的であり、不具合も現れてから対処するといった全体を見ていない事に気づく。走りたいがあまりチェックが蔑ろになっていた。故に全ての機器がベストになっておらず、戦果もいまいち状態が続く。パーツの状態を都度丁寧に精査して、少なくとも試合の前にはすべてのパーツが最高性能を発揮できるような状態に持っていかないと成績は伸びないのだろう。乗る事ばかり考えていては最後の1秒は手に入らない。
岩瀬監督の完璧なエンジニアリングは地味で目立たないがその凄さも身に染みて感じてくる。おじさんの星とは彼のような人を指すのかもしれない。
2022/11/06
「美浜サーキットのホームページ見てたんですけど、レンタルカートで57秒台をマークするともっと早いカートに乗らせてもらえるらしいっすョ」
と、同僚のカートドライバーが言う。日程を申し合わせて早速美浜サーキットへ向かって一所懸命に走ってみたところ、何とか57秒台をマーク。細かな操作はさておきレーシング走行の基本を押さえた走りをしさえすれば何とか達成できる設定のようであった。この日は他のドライバーの練習の世話もあったのでライセンスの発行にとどまったが、早いカートとはEX21をレーシングカートフレームに搭載した車両のようだった。このEXカートで52秒台をマークすると次はSライセンスなるものを発行してくれるらしいので是非次回チャレンジしてみたい。が、今度は手ごわそうだ。
美浜サーキットの醍醐味は何といっても下り坂バックストレートエンドの高速右コーナー。一般車も走行できるように道幅が広いので、失敗してもエスケープマージンがたくさんあるから、勇気をもって高速コーナリングにチャレンジしてみよう。
2022/11/13
「あっくん、カートは一般論として後ろにもたれて旋回しろって言うんだけれど、どうしてもアンダーが出るんでコーナーではフロントを押さえるためにハンドルにしがみついて旋回するんだよね。」
「体小さいとそんなことできひんし、まぁ木村さんみたいな上背がある人ならではのテクニックかもしれへんけど、使うなとは言わんけれど味付け程度の部分であって常用するものではないな。それはリュウジ時代の古くて硬いカートの乗り方でOTKの乗り方や無いし、そんな奴はOTK乗るな~みたいな。」
「でもタイム出るときはハンドルにしがみついた時でね、要る分だけどうしても前かがみになるし、体格一緒の河野くん(2021SSチャンピョン)の乗車姿勢も前かがみだし。」
「そない言うならいっぺん前の方にウェイト付けて試してみたらええんやん。」
早速試験的に前の方にウェイトを取り付けて、その日の最後のセッションに出発した。するとカートの挙動はすっかり変わっていた。コーナー時にこれまでに感じた事が無いような強いグリップ感。そしてコツは必要だったがずっとわからないと思っていた左旋回荷重が強烈にあった。心地よい撓(しな)り。面白がって走っていると大観選手がコース脇からピットストップサイン。戻ってくると工具を持ったあっくんが立っている。
「あとな、ここも緩めてみよか。」
フロントスタビが緩んだ。コースに戻るとカートは更に食いつくようになった。以前はグリップが不確かで暴れる印象だったが、今回はしっかりと接地。印象としてはサスペンションが付いた感じ。しかしあまりにバネっぽいので極短時間に右左に振るような荷重移動を控え丁寧に蹴りだすように操縦してみると、いとも簡単にほぼ自己ベストタイムが出た。何も頑張らずに、まるでチェッカー後の1周を周ってくる程度のゆとりな走りで。
「なんじゃぁコレは!?乗り物が変わったみたいだぞ!」
最終セッションだったのでこれ以上はわからないが、仮説としてはこれまで重心が適正位置から後ろにずれているカートを一所懸命に操縦してた訳で、結果グリップも十分生かせておらず、そのアンダー処理のために前かがみになり、乗り方としてはレインスリックな乗り方をしていたことになる。自分にあったカートに乗りたいからわざわざ買ったんじゃなかったのか?こんなに曲がるなら奥にだって行ける。Vターンだって意味がわかる。前かがみじゃないから後輪の蹴り出しもしっかり伝わるので、りゅうじさんの言う「0カウンター程度」の流しも狙ってできそうだ。う~ん、3年ほど一体何をしていたのだろう?
石野最終戦は遠征組も含めてお祭り。仕事で前日練習ができなければこのセッティングのまま最終戦を戦うことになるが、この良いフィーリングを最終戦で生かすことができるか?園長木村は脱皮できるのか?
2022/11/13
カートは理論で乗る。
分析、仮説、実証を繰り返したドライバーが
一番速くなる。
素質は関係ない。
これはあっくんの口癖の「頭をつこうて走れ」の格言だと思う。漠然と走り続けてもただマシンを消耗しタイヤを減らすだけ。何か自分よりも優れたものと自分とを比較し、その差が生まれる原因を考察し、仮説を立て、そのように車を走らせ、技量が不足していればその点について練習し、技術的に無理ならセッティングを見直し、仮説が正しかったことをタイムで実証する。理屈っぽいおじさんの背中を押してくれるような言葉だ。
「走りに疑問を持たんような奴は俺は嫌いや」
2022/11/15
誰もが最初に言われてあまりやっていない動作に「コーナーの出口を見ろ」がある。不慣れな頃は恐ろしくてそれどころではないケースも多いので何とも言えないがこれは結構大事な動作。何故かというとカートの旋回とスライドを見分けるためには出口を見てないとわかりにくいからだ。旋回率とスライド率、そしてドリフト率を頭の中で合算、演算して、コーナー出口の狙った位置に狙った向きでカートを持っていくには今の動きを(ベクトルと旋回)感じ取る(検出)するしかない。
簡単に練習するにはコースインしてからバックストレートなどでウィービングする事があると思うが、バックストレートエンドを見ながら、できれば頭の向きも固定してウィービングをしてみるとよくわかると思う。一度試してみて欲しい。。
2022/11/17
りゅうじさんにウェイトの状況を報告。
「なるほど!では、あと2~3kg落として調整幅増やせると良いですね!」
高校時代の体重が64kg台で、現在は朝のトイレ後のドライ計測63kg台。61kg台を狙うと現在よりも身長が小さかった中学生時代の体重。プロ集団SAレーシングEiwa Racing Serviceはマシンのチューニングもシビアだが
「木村さんはプロドライバーになる訳やないから、そこまでしなくてもいいんですけどね!」
と言いながら必要な肉体改造もウェイト脱着程度に注文してくる。自分が目指しているのはプロではない。ハイアマチュアだ。昨日の自分に勝てればそれでいい。でも一瞬くらいプロの前に出たい。勝てない勝負でも904GTSをオーバーテイクした2000GTの如く。意味不明だが、とにかく車両を見回しても軽量化部分はほとんど見当たらないので自分を削るしかない。レースまであと10日。体力を残したままの減量は成功するのか?そして更に園長木村を突き放す。
「結局カートは重量配分的に、体が小さい、ウェイトが軽い人が有利ですね!」
身長は182cm、体重はガソリンギリギリで総重量145kgを何とか維持している状態で、そもそも論が出てくると厳しい。でもそんな事はわかっていた。重心が厳しい状態でも練習を続けてきた。しかし重心が前に出るとすごく旋回しやすい事がわかるようにもなった。園長木村はアンダーを消してどこまで順位を上げられるのか。
2022/11/27
石野SLシリーズ最終戦は踏んだり蹴ったり。路面が出来上がっておらず、直前にオーバー仕様に変更した車両を乗りこなせなかった。戦果はう~むと言った所であろうか。直前にバランスを変えたとはいえ、決勝でチェッカーを受けられたので良しとしよう。個々の状況はまたリポートするが、公式練習後に41号車前スプロケットビスの破断を発見、タイムトライアルに向けて緊急交換して何とか出走するも今度はチェーンが外れて出戻り。予選は最後尾の20番グリッドからの出発で、順位は14位。決勝は13位でチェッカー。不慣れな車両であることを考えれば上出来であったと思いたい。そして最後まで極めることができなかったSL17。今シーズンをもってブリジストンがタイヤ供給をやめるので次回からはダンロップ製SL22となる。今度こそ石野で36秒台で走りたいと心に誓い今シーズンを終えた。オフ中に練習に励もう。